『リプリー』偽りの自分として生きる、美しくも残酷な選択。

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1. 基本情報

  • 公開年: 1999年
  • 評価: 7.2
  • ジャンル: Thriller, Crime, Drama
  • 監督: アンソニー・ミンゲラ
  • 主な出演者: マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー

2. あらすじ

1950年代のニューヨーク。貧しい生活を送る青年トム・リプリーは、ある富豪から「イタリアで放蕩生活を送る息子ディッキーを連れ戻してほしい」という依頼を受けます。イタリアへ向かったトムは、眩いばかりの太陽の下、自由奔放で魅力的なディッキーと、その恋人マージの生活に深く入り込んでいきます。しかし、ディッキーの持つ富と特権、そして彼そのものへの憧れは、次第に歪んだ独占欲と執着へと変わり、「本物の誰でもない自分より、偽物の誰かになりたい」という危険な衝動がトムを狂気へと駆り立てていきます。

リプリー ポスター画像

3. 映画レビュー

「何者かになりたい」という、誰もが心の底に抱える小さな願望。それが最悪の形で暴走してしまったら……。本作『リプリー』は、そんな人間の根源的な恐怖と美しさを描いた、至高の心理スリラーです。

まず語るべきは、主演のマット・デイモンの圧倒的な演技力です。当時のファンの間では「なぜ彼がこの役でオスカーにノミネートされなかったのか」と今でも議論になるほど、彼の演じるトム・リプリーは繊細で、そして恐ろしい。自分を偽り、嘘を重ねるたびに、彼の瞳に宿る孤独と狂気が深まっていく様子には、見ているこちらまで息が詰まりそうになります。成功のためにモラルを捨て去る姿は、現代の傑作スリラー『Nightcrawler(ナイトクローラー)』の主人公とも通じるものがありますね。

そして、彼が憧れるディッキーを演じたジュード・ロウ。この頃の彼の輝きはまさに「神がかり的」と言っても過言ではありません。イタリアの陽光を一身に浴びたような、残酷なまでの美しさと傲慢さ。トムが彼になり代わりたいと願う動機に、これ以上の説得力はありません。最近話題の『Saltburn』という作品も、本作へのオマージュが強く感じられると評判ですが、やはりこの「持たざる者が持つ者の世界を侵食していく」というテーマの原点にして頂点は、この『リプリー』だと私は思います。

美しいイタリアの街並みやジャズの音色とは裏腹に、物語はどんどん冷たく、暗い深淵へと沈んでいきます。一つ嘘をつけば、それを隠すためにさらなる嘘が必要になる。その連鎖がもたらす緊張感は、密室劇のような緻密さを持つ『The Invisible Guest』が好きな方にもぜひ味わってほしいポイントです。

上流階級の煌びやかな世界の裏に隠された秘密や、人間の醜い本質を覗き見たいなら、本作は間違いなくあなたの心に深く爪痕を残すでしょう。雪山を舞台にした『Deep Powder』のように、美しい景色の中でこそ際立つ人間の「闇」を、ぜひこの週末に堪能してみてください。

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