今回ご紹介するのは、ブラックコメディの金字塔として名高いフランク・キャプラ監督の傑作『毒薬と老嬢』(原題:Arsenic and Old Lace)です。イタリア語タイトルでは『Arsenico e vecchi merletti』として知られています。殺人事件を扱っているのに、こんなに笑える映画があるなんて!と驚くこと間違いなしの、クラシック映画ながらも現代の私たちにも刺さるユーモアに溢れた作品です。
1. 基本情報
本作は、ブロードウェイのヒット戯曲をフランク・キャプラ監督が映画化したものです。主演は、当時のハリウッドを代表する大スター、ケーリー・グラント。彼が見せるコミカルなオーバーリアクションは、この映画最大の魅力の一つです。
- 原題: Arsenic and Old Lace
- 邦題: 毒薬と老嬢
- 公開年: 1944年
- 監督: フランク・キャプラ
- 主演: ケーリー・グラント、プリシラ・レイン、ジョセフィン・ハル、ジーン・アデア
- ジャンル: コメディ・スリラー
- 上映時間: 118分
2. あらすじ
主人公は、ニューヨークで劇評家として活躍するモーティマー・ブリュースター(ケーリー・グラント)。彼は独身主義者でしたが、恋人エレインと結婚し、幸せいっぱいの新婚生活をスタートさせます。結婚を機に、モーティマーはブルックリンにある実家を訪れます。そこには、慈善活動に熱心で近所でも評判の優しい叔母、アビーとマーサが住んでいます。
しかし、幸せな気分も束の間、モーティマーは叔母たちの家の窓際にある収納ボックスの中に、隠された遺体を発見してしまいます。なんと、心優しい叔母たちは「孤独な老人に安らかな死を与える」という名目で、エルダーベリー・ワインにヒ素を混ぜて毒殺し、遺体を埋めていたのです!
この衝撃的な事実を知ったモーティマーはパニックに陥ります。さらに、長年行方不明だった極悪非道な兄ジョナサンが、整形手術で顔を変えて(しかもボリス・カーロフ似!)戻ってきたり、もう一人の変わり者の兄テディ(自分をセオドア・ルーズベルト大統領だと思い込んでいる)が墓穴を掘り進めていたり……。
モーティマーは、愛する叔母たちを世間の目から守りながら、次々と起こる異常な事態を収拾しようと奮闘しますが、事態は悪化の一途をたどります。果たして、彼はこの狂気に満ちた家族から抜け出し、新妻エレインとの平穏な生活を取り戻すことができるのでしょうか?
[ポスター画像]
3. 映画レビュー
この映画の魅力は、何と言っても「死」という重いテーマを扱っているにもかかわらず、終始明るくテンポの良いコメディとして成立している点にあります。これぞ、ブラックコメディの最高峰!
ブラックユーモアと愛すべき狂気
殺人犯である叔母たちが全く悪意がなく、むしろ善良な市民として描かれているのがポイントです。彼女たちの「善意の殺人」と、それに振り回されるモーティマーの悲鳴が、観客にとっては最高の笑いの源になります。特に、叔母たちが「私たちはたった12人しか埋めていないわ」と平然と言うシーンには、背筋が寒くなるのに笑ってしまう、絶妙なユーモアがあります。
ケーリー・グラントのオーバーリアクションが最高!
主演のケーリー・グラントは、普段のクールな二枚目役とは打って変わって、終始叫び、走り回り、顔を歪ませるオーバーな演技を披露しています。婚約したばかりなのに、実家が殺人現場だと気づいた時の彼のパニックぶりは、見ていて本当に楽しいです。彼のコメディセンスが爆発しており、古典的な作品ですが、現代のドタバタコメディにも通じる面白さがあります。
密室劇のスリルとテンポ
舞台劇が原作ということもあり、物語のほとんどがブリュースター家の中で展開されます。次から次へと予期せぬ人物や遺体が登場し、モーティマーがそれを必死に隠蔽しようとする様子は、一種の密室スリラーとしての緊張感も併せ持っています。この畳み掛けるような展開の速さが、古さを感じさせません。
クラシックなコメディがお好きな方、またはちょっと変わったスリラーをお探しの方に心からおすすめしたい一本です。ちなみに、ドタバタコメディといえば、以前紹介した『The Best of Laurel and Hardy』笑いの殿堂へようこそ!永遠のドタバタコンビ傑作選もおすすめです。クラシック映画の魅力にハマったら、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。
『毒薬と老嬢』は、人生最大の喜劇が、人生最大の悪夢と紙一重であることを教えてくれる、最高に愉快な映画です。ぜひ、この愛すべき狂気の家族に会いに行ってみてください!


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