『Evilenko』崩壊するソビエトが生んだ、最悪の怪物。

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基本情報

公開年: 2004年

ジャンル: 犯罪, ドラマ, スリラー

あらすじ

1980年代から90年代にかけてのソビエト連邦。社会主義体制が崩壊へと向かう混乱の中、元教師のアンドレイ・エヴィレンコは、その歪んだ欲望を解放し、恐ろしい連続殺人鬼へと変貌を遂げる。彼の犯行は年々エスカレートし、数多くの子供や女性が犠牲となるが、体制の硬直化と捜査技術の未熟さから、犯人像は一向に浮かび上がらない。

長年にわたりエヴィレンコの影を追い続けるのは、執念の刑事レシーエフと、精神分析医のアロン・リヒター。彼らは、犯人が持つ特異な心理プロファイルと、崩れゆく国家への狂信的な怒りに着目し、徐々に犯人へと迫っていく。しかし、エヴィレンコは巧みに捜査網をくぐり抜け、次々と凶行を重ねていくのだった。果たして、この怪物を止めることはできるのか。

Evilenko ポスター

映画レビュー

今回は、実在した連続殺人鬼アンドレイ・チカチーロをモデルにした映画『Evilenko』を紹介します。まず言っておきたいのは、この映画、とにかく重くて暗い!ハッピーな気分になりたい時には絶対におすすめしません。でも、人間の心の闇や、社会の混乱が生み出す狂気を描いた作品が好きな人には、たまらない一本かもしれません。

なんといっても、主演のマルコム・マクダウェル(『時計じかけのオレンジ』で有名ですね)の演技が圧巻です。普段は平凡な市民を装いながら、ひとたび獲物を見つけると冷酷な殺人鬼の顔をのぞかせる。その二面性の表現が本当に恐ろしくて、観ているだけで背筋が凍るようでした。彼の狂気的な目つきは、一度見たら忘れられません。

また、この映画の背景となっている「ソビエト連邦の崩壊」という時代設定が、物語に一層の深みを与えています。自分が信じてきた国家や価値観が目の前で崩れていくことへの怒りと絶望が、エヴィレンコの犯行動機と結びついているという描写は非常に興味深かったです。社会の混乱が、一人の人間の内なる怪物を解き放ってしまったのかもしれない、と考えさせられました。

人間が怪物へと変貌していく様は、観ていて本当にゾッとします。その根源的な恐怖は、どこか『Nahual』で描かれていた血に飢えた獣の目覚めにも通じるものがあるかもしれません。ただ、本作の怪物は超自然的な存在ではなく、すぐ隣にいるかもしれない人間だという点が、より現実的な恐怖を感じさせます。

全体的に救いのないストーリーで、観終わった後にはずっしりとした疲労感が残りますが、それだけ強烈なインパクトを持った作品です。サイコスリラーや、史実を基にした犯罪映画が好きな方は、ぜひチェックしてみてください。

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