あらすじ
舞台はイタリア、ローマの中心部にひっそりと佇む由緒あるパラッツォ(館)。この館には、風変わりで個性的な幽霊たちが長年住み着いていました。17世紀の色男レジナルド(マルチェロ・マストロヤンニ)、短気な騎士カッパレッリ、陽気な修道女、そして無邪気な子供の幽霊。彼らは館の主である老伯爵と奇妙ながらも平和な共同生活を送っていました。
しかし、その平穏は老伯爵の突然の死によって打ち破られます。館を相続したのは、現実主義者で金儲けのことしか頭にない甥のフェデリコ。彼はこの古びた館を取り壊し、近代的なアパートを建設して一儲けしようと企みます。住処を失う危機に瀕した幽霊たちは、自分たちの愛する館を守るため、あの手この手でフェデリコの計画を阻止しようと、奇想天外な嫌がらせ作戦を開始するのでした。

映画レビュー
1961年に公開された本作は、イタリア映画黄金期を彩る豪華キャストが共演した、魅力あふれるファンタジック・コメディです。マルチェロ・マストロヤンニをはじめとする名優たちが、人間味(?)あふれる幽霊たちを生き生きと演じています。
この映画の最大の魅力は、なんといっても個性豊かな幽霊たちのキャラクター造形です。彼らは決して恐ろしい存在ではなく、むしろ愛嬌たっぷりで、それぞれの時代を生きた人々の記憶そのもの。近代化の波によって古き良きものが失われていくローマの街で、自分たちの存在意義と居場所を守ろうと奮闘する姿は、どこか切なく、そして力強いメッセージ性を帯びています。
ユーモアとペーソスが絶妙に織り交ぜられた物語は、単なるドタバタコメディに留まりません。幽霊という非現実的な存在を通して、世代間の価値観の対立や、伝統と近代化の狭間で揺れる社会を風刺的に描いています。特定の場所で繰り広げられる風変わりな共同生活は、どこか『Fort Buchanan』で描かれた基地での人間模様にも通じるものがあり、孤独とユーモアが同居する独特の空気感が観る者を引き込みます。
古き良きイタリア映画の雰囲気が好きな方、心温まるファンタジー作品をお探しの方にぜひおすすめしたい一本です。ローマの美しい街並みを背景に、愛すべき幽霊たちが繰り広げる物語をぜひお楽しみください。


コメント