基本情報
公開年: 2017
ジャンル: スリラー
監督: スティグ・スヴェンセン
主なキャスト: カリ・ブレムネス, エリック・ヒヴュ, ヴェイガル・ホール
評価: 5.8 (TMDb)
あらすじ
1962年、ノルウェー領スヴァールバル諸島。キングスベイ炭鉱で大規模な爆発事故が発生し、21人の鉱夫が命を落とした。この「キングスベイ事件」は単なる悲劇的な事故として処理されたが、その責任を問われた労働党政府は第二次世界大戦後から続いていた長期政権の座から滑り落ちることになる。
しかし、本当にこれはただの事故だったのか?数年後、一人のジャーナリストが事件の真相に迫るうちに、政府が隠蔽した冷戦下の政治的陰謀の匂いを嗅ぎつける。炭鉱の闇に葬られたはずの真実が、今、暴かれようとしていた。

映画レビュー
実際にあった歴史的な事件をベースにした映画って、それだけでグッと引き込まれますよね。今回紹介する『Kings Bay』は、ノルウェーの歴史を揺るがした炭鉱事故の裏側に迫る、重厚なポリティカル・スリラーです。
まず、映画全体を包む冷たくて重い空気がすごい。舞台が極寒の地スヴァールバル諸島ということもあって、映像から伝わる寒々しさが、物語の不穏な雰囲気と見事にマッチしています。どこか『Winter People』のような、厳しい自然が人間のドラマを際立たせる感じがありました。
物語は派手なアクションがあるわけではなく、ジャーナリストの地道な調査を通して、じわじわと真相に近づいていくスタイル。だからこそ、一つ一つの証言や資料が持つ意味が重くのしかかってきて、観ているこちらも息を呑んでしまいます。「事故」の裏に隠された、アメリカとソ連の駆け引き。冷戦という大きな時代の波に、一国の運命がどう翻弄されていったのかが描かれていて、歴史の勉強にもなりました。
国家という巨大な権力を前に、真実を追求する主人公の姿には胸が熱くなります。こういう社会派スリラーは、フィクションでありながらも、現実の世界で起きていることに目を向けるきっかけをくれますよね。ソビエトというキーワードで言うと、崩壊していく国家が生んだ闇を描いた『Evilenko』も衝撃的でしたが、本作はまた違った切り口で国家の暗部を抉り出しています。
正直、少し展開がゆっくりに感じられる部分もあるので、スピーディーなサスペンスを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。でも、じっくり腰を据えて、歴史の謎解きに没入したい人には絶対におすすめ。見終わった後、この「キングスベイ事件」について、思わず検索してしまうはずです。


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