こんにちは、映画を愛してやまない「私」です。今回ご紹介するのは、2023年に公開された心に深く刺さる一作『O+』です。1990年代という、今よりもずっと病に対する無知と偏見が渦巻いていた時代。その激流の中で、尊厳をかけて戦った人々の物語をカジュアルに、かつ真剣に紐解いていきたいと思います。
1. 基本情報
公開年:2023年
評価:3.8 / 5.0
ジャンル:ドラマ
監督・キャスト:ドミニカ共和国とアルゼンチンの才能が集結し、当時のリアリティを追求しています。

2. あらすじ
舞台は1990年代のブエノスアイレス。ドミニカ共和国から移住し、この地で成功を収めていた二人の男女が主人公です。順風満帆な生活を送っていた彼らでしたが、ある日、自分たちが「HIV陽性」であることを知ります。当時は治療法も確立されておらず、社会全体がこの病に対して極端な恐怖と偏見を抱いていた時代。昨日まで彼らを称賛していた人々は、手のひらを返したように拒絶と差別を突きつけます。異郷の地で孤立した二人が、絶望の淵で見出した希望とは何か。生きる意味を問い直す過酷な旅が始まります。
3. 映画レビュー
この映画を観終わった後、私はしばらく席から立ち上がれませんでした。まず、90年代という時代の空気が恐ろしいほどリアルに再現されています。今でこそ理解が進んでいるHIVですが、当時の「死の病」というレッテルがいかに残酷だったか。成功者から一転して「排除されるべき存在」に転落する描写は、観ていて胸が締め付けられます。
特に印象的だったのは、アルゼンチンという異国で暮らす彼らが感じる「孤独」の深さです。以前紹介した『Boy A』でも、一度貼られたレッテルによって社会から拒絶される若者の苦悩が描かれていましたが、『O+』の二人が受ける仕打ちは、それ以上に「無知」からくる暴力的なものでした。
また、健康という最も基本的な権利が、社会的な立場や偏見によって容易に奪われていく様子は、『WELL』で描かれた、環境や人種によって健康が脅かされる家族の戦いにも通じるものがあります。どちらの作品も、「ただ生きたい」という願いがどれほど重く、尊いものであるかを教えてくれます。
映像面では、ブエノスアイレスの街並みがどこか冷たく、それでいてどこかノスタルジックに映し出されており、二人の心情とリンクしているようで美しかったです。俳優たちの演技も素晴らしく、言葉にできない絶望と、それでも消えない生命力を瞳の中に感じることができました。救いがないように思える瞬間もありますが、それでも最後には『In Safe Hands』のように、誰かの温かな手が差し伸べられることの重要性を強く再確認させてくれる作品です。
「重いテーマだから…」と敬遠せずに、ぜひ多くの人に観てほしいです。今の私たちが享受している「当たり前」が、どれほどの戦いの上に成り立っているのか。そんなことを考えさせてくれる、本当に大切な一本になりました。週末、静かな夜にじっくりと向き合ってみてください。


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