『The Little World of Wilbur』小さくなった彼と、彼女だけの秘密の世界。

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1. 基本情報

公開年: 1997年
評価: 0.0
ジャンル: ファンタジー / ドラマ
概要: 『Eaten Alive: A Tasteful Revenge』の精神を継承した本作。ドーン・マーフィーがデイブ・カスティリオーネを「小さく」してしまうという、奇妙で幻想的な復讐劇です。

2. あらすじ

物語は、一人の女性ドーン・マーフィーが、ある男性デイブ・カスティリオーネを魔法のような力で手のひらサイズに縮小させてしまうところから始まります。かつての因縁に対する「味わい深い復讐」として彼を小さくしたドーンは、彼を自分の支配下に置き、自分だけの『小さな世界』を作り上げます。巨大な女性と、逃げ場のない小さな男性。二人の間に流れる、歪で、でもどこか魅惑的な力関係が、密室のような空間で静かに描かれていきます。

The Little World of Wilbur ポスター

3. 映画レビュー

1997年という時代に、これほどまでにニッチで、かつプライベートな空気感を持つ「縮小人間」モノが作られていたことに驚きました。ハリウッドの大作パニック映画とは一線を画す、非常に個人的でフェティッシュな魅力に溢れた作品です。私たちが普段当たり前に使っているスプーンやコップが、デイブの視点からは巨大な障害物や道具に見える演出は、どこか不気味でありながらも、日常の景色を再発見させてくれる面白さがあります。

この映画を観ていて思い出したのは、以前このブログでも紹介した『Themistokleous 88』です。あちらはアテネの路上で日常が壊れていく物語でしたが、本作もまた、ドーンという一人の女性の手によって、デイブの「日常」が物理的に、そして精神的に徹底的に破壊されていく様子が共通しています。自分を支配する巨大な存在に抗えない恐怖と、その裏側にある奇妙な安らぎ。そんな複雑な感情が、1990年代特有のざらついた映像美の中で表現されています。

世間では、ディズニーワールドの道路工事が15ヶ月遅れるといったニュースや、バーガーキングの新しいワッパーの質がどうだといった話題が溢れていますが、映画好きとしては、そうした消費される情報よりも、本作のような「誰も語らない、水面下で愛され続けるファンタジー」にこそ惹かれてしまいます。情報が極端に少ないカルト作だからこそ、自分なりの解釈を加えながら観る楽しみがあるんですよね。例えば、この不条理な設定を社会の縮図として捉えるなら、『未来世紀ブラジル』のようなディストピア的な孤独感にも通じるものがあります。

「もし自分が手のひらサイズになったら?」という誰しもが一度は抱く空想を、これほどまでにシニカルかつ美しく描き出した作品は他にありません。大きなドラマが起きるわけではありませんが、二人の間に流れる濃密な時間は、観終わった後もしばらく心に残り続けます。繰り返される支配の構図に興味があるなら、『Routines』のような作品と併せて観るのも、また違った視点が開けて面白いかもしれません。深夜、一人で静かに「秘密の世界」を覗き見たい、そんな気分の時にぴったりの一本です。

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