1. 基本情報
今回ご紹介するのは、2010年に公開された異色のコメディ作品『There Had Better Be Blood』です。タイトルだけ聞くとシリアスなサスペンスやホラーを想像するかもしれませんが、実際は兄弟の確執をシニカルに描いたシチュエーション・コメディとなっています。
- タイトル: There Had Better Be Blood
- 公開年: 2010年
- ジャンル: コメディ
- Filmarks/IMDb評価: 0.0 (公開規模が小さいため、評価が未集計となっているようです)
この「評価0.0」という事実が、この映画の持つニッチな魅力を逆に際立たせている気がします。商業的な成功よりも、特定のテーマに深く切り込んだ、通好みの作品かもしれません。
2. あらすじ
物語の中心となるのは、犬猿の仲である二人の兄弟です。彼らは父親の元へ向かうため列車に乗る予定でしたが、道中でまたしても激しい喧嘩を始めてしまいます。
その結果、二人は母親によって途中の寂れた田舎の駅に降ろされ、次の列車が来るまでそこで待機するよう命じられます。母親は二人に電話をかけ、こう言い放ちます。「次にあなたたちが喧嘩をするようなことがあったら、ただじゃおかないわよ(There Had Better Be Blood)」。
「血を見るぞ」という、まるで西部劇のような物騒な母の脅し。しかし、ジャンルはコメディです。その「血」が何を意味するのか、兄弟は互いに警戒しつつも、退屈な駅の待合室という閉鎖的な空間で、皮肉とユーモアに満ちた駆け引きを繰り広げます。彼らは母親の目を逃れて、無事に目的地に辿り着けるのでしょうか?

3. 映画レビュー
この映画は、兄弟間の普遍的な葛藤を、極めてミニマルな設定の中で描き切っています。舞台となるのはほぼ駅の待合室とホームのみ。この制約が、逆に兄弟の心理的な緊張感を高め、会話の応酬を際立たせています。
シニカルなユーモアと隠されたテーマ
タイトルの『There Had Better Be Blood』は、有名な傑作映画『There Will Be Blood(血が流れるだろう)』を彷彿とさせますが、本作の「Blood」は、物理的な流血ではなく、兄弟の間に流れる「血縁」そのものの重さ、あるいはそこから生じる確執を象徴しているように感じました。母親の言葉は、文字通り「血の惨事」を警告しているのではなく、「血のつながり」という抗えない宿命から逃れるな、という皮肉めいたメッセージかもしれません。
兄弟の会話は終始シニカルで、お互いを貶め合う言葉の暴力が中心です。しかし、その根底には、幼い頃から続く深い絆と、分かり合えないことへの諦めのようなものが透けて見えます。シチュエーションコメディでありながら、人間のエゴや家族という集団の面倒くささを鋭く突いてくる、ブラックな笑いが持ち味です。
特に、二人が互いに仕掛け合う小さな嫌がらせの応酬が絶妙です。駅の売店で買ったサンドイッチの具をこっそり入れ替える、相手の携帯の着信音を子供向けの歌に変える、など、大人げない行動が続くほどに、彼らがまだ母親の支配下にある子供の延長線上にあることが示され、笑いを誘います。
密室劇、あるいは心理戦
この映画のように、限られた空間で人間ドラマが展開する作品は、登場人物の演技力が試されます。本作の兄弟役の二人は、その緊張感と脱力感のバランスが素晴らしく、観客を飽きさせません。もし、密室劇や、予測不能な人間関係の駆け引きを描いた作品がお好きなら、以前レビューした『Last Stop』復讐の連鎖が止まらない、予測不能なノワール・スリラー!もおすすめです。
また、本作は「家族の絆」というテーマを、一般的な感動路線ではなく、喧嘩や確執を通じて描いています。家族の愛や絆という普遍的なテーマを扱った作品としては、姉妹の強い結びつきを描いた『Four Mothers』四人姉妹の愛と絆、その輝きは色褪せない。もありますので、興味があればぜひ。
評価が低い(未集計)ということは、逆に言えば埋もれた名作である可能性も秘めています。日常に潜むイライラや、家族だからこそ許されるギリギリのラインのやり取りに共感できる人には、きっと響く一本だと思います。予測不能なオチも含めて、ぜひ最後まで見届けてみてください。


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