今回ご紹介するのは、音楽ファン、特にジャズ好きなら誰もが知る「ジャズの帝王」マイルス・デイヴィスが、そのキャリアにおいて最も革新的な時期に残した貴重なライブ映像です。
1. 基本情報
これは一般的な劇場公開映画というより、1969年に行われたデンマークのコペンハーゲンとイタリアのローマでの公演を記録した映像作品です。1960年代後半、マイルスはアコースティック・ジャズからエレクトリック・ミュージックへと大胆な転換を図っていました。この映像は、その変革期の真っ只中、バンドが爆発的なエネルギーを放っていた瞬間を捉えています。
- タイトル: Miles Davis Quintet – Live In Copenhagen & Rome 1969
- 公開年: N/A (1969年録音)
- ジャンル: 音楽ドキュメンタリー / ライブ
- 上映時間: 約90分
2. あらすじ
1969年、マイルス・デイヴィスは「セカンド・グレート・クインテット」の最終形とも言えるメンバーでヨーロッパツアーを敢行しました。メンバーは、テナー・サックスのウェイン・ショーター、エレクトリック・ピアノのチック・コリア、ベースのデイヴ・ホランド、そしてドラムのジャック・ディジョネットという、後のジャズ界を牽引する超一流の若手揃いです。
彼らがこのツアーで演奏したのは、マイルスのキャリアを決定づけた傑作アルバム『イン・ア・サイレント・ウェイ』や、フュージョン時代の幕開けを告げた『ビッチェズ・ブリュー』に収録されることになる楽曲群です。マイルスはトランペットにワウペダルやエフェクトをかけ、チック・コリアはエレピを激しく叩き、バンド全体がロックやファンクの要素を取り入れた、当時のジャズとしては非常にアグレッシブなサウンドを展開しています。
このライブ映像は、彼らが新しい音楽の形を模索し、即興演奏の中でスリリングな会話を繰り広げていく様子を、生々しく記録しています。ジャズの歴史における重要な転換点を目撃できる、まさにタイムカプセルのような作品です。

3. 映画レビュー:歴史が震えた瞬間を体感する
私自身、ジャズの歴史の中で最も好きな時期の一つが、この1960年代後半から1970年代初頭にかけてのマイルスのフュージョン期です。この映像の魅力は、何と言ってもその凄まじい「熱量」にあります。
特に注目すべきは、チック・コリア、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットというリズム隊の破壊力。彼らは若く、マイルスの指示のもと、それまでのジャズの常識を打ち破るような、自由で、時に混沌としたグルーヴを生み出しています。マイルスが放つ一音一音は、まるで電撃のようで、その緊張感に観ているこちらも息を飲みます。
この時期の演奏は、完全に即興の塊です。曲の構造はあっても、その中身は毎回変わり、メンバー同士が音で激しく会話しているのがわかります。まるで、5人の天才がリングの上で真剣勝負を繰り広げているよう。音楽が生まれる瞬間のエネルギーを感じられるのは、ライブ映像ならではの醍醐味ですよね。
このライブで聴ける楽曲の革新性については、他の音楽ドキュメンタリーやライブ映像を見た時にも感じた、時代を作るアーティストたちの情熱に通じるものがあります。以前ご紹介した『The History Of Iron Maiden – Part 2: Live After Death』のようなロックのライブ映像とはまた違った、内省的でありながら爆発的なエネルギーがここにあります。
音楽評論家の間でも、マイルス・デイヴィスが後の世代に与えた影響は計り知れないと評価されています。例えば、ハイチ系カナダ人アーティストのJowee Omicilも、マイルス・デイヴィスを称賛し、ジャズと様々なジャンルを融合させているように(参照)、マイルスの革新的な精神は今も生き続けています。
この映像は、ジャズファンはもちろん、「音楽が生まれる瞬間」に興味がある全ての人におすすめしたいです。当時のファッションやカメラワークも含めて、1969年のヨーロッパの熱狂的な空気を感じられる、貴重な体験になるはずです。
もしあなたが、何か新しい音楽に触れたい、あるいは歴史的な名演を追体験したいと思っているなら、『Miles Davis Quintet – Live In Copenhagen & Rome 1969』は最高の選択肢になるでしょう。ぜひ、この狂熱のセッションを体感してみてください。


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