『The Silent House』全編ワンカットで描かれる、逃げ場のない恐怖。

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基本情報

公開年: 2010年
ジャンル: ドラマ, ホラー, ミステリー, スリラー
監督: グスタボ・エルナンデス

あらすじ

舞台は、人里離れた一軒家。主人公のローラは、父親のウィルソンと共に、売却予定のこの家の修繕のためにやってきます。電気も通っていない不気味な家で一晩を過ごすことになった二人。しかし、その夜、2階から聞こえてくる奇妙な物音が、悪夢の始まりを告げます。

父親が様子を見に2階へ上がったきり、戻ってこない。家に一人取り残されたローラは、暗闇の中で得体の知れない“何か”の存在に怯え、逃げ惑います。この映画の最大の特徴は、この恐怖の78分間が、たった一つのカメラで、編集なしのワンカットで撮影されていること。あなたはローラの視点を通して、リアルタイムでこの絶望的な一夜を追体験することになるのです。

The Silent House ポスター

映画レビュー

「全編ワンカット」という言葉に惹かれて観てみましたが、これは想像以上の没入感でした!カメラが主人公ローラの背後をずっと追い続けるので、まるで自分がその家にいるかのような感覚に陥ります。息遣いや足音、暗闇の向こうから聞こえる不気味な音…その全てがダイレクトに伝わってきて、心臓がずっとバクバクしていました。

ホラー映画でよくある、急に大きな音で驚かせる「ジャンプスケア」に頼らず、じわじわと精神を追い詰めてくる静かな恐怖がこの映画の持ち味です。タイトルが『The Silent House』(静かな家)というのも皮肉ですよね。静かだからこそ、どんな小さな物音も聞き逃すまいと神経が研ぎ澄まされ、余計に怖さが増すんです。

閉鎖された空間での恐怖という点では、以前紹介した『Eden』にも通じるものがありますが、本作は超常現象的な怖さが加わって、また違った種類の息苦しさがあります。

そして、この映画はただ怖いだけでは終わりません。ラストには衝撃的な事実が待ち受けています。正直、「え、そういうことだったの!?」と声が出てしまいました。すべての謎が解けたとき、それまで見てきた恐怖の光景が全く違う意味を持って見えてくるはずです。この巧妙なストーリー構成には脱帽しました。

もちろん、ワンカット撮影という手法上、少し展開がゆっくりに感じられる部分や、手持ちカメラの揺れで画面酔いしてしまう人もいるかもしれません。しかし、この実験的な試みがもたらす圧倒的な臨場感は、他のホラー映画では味わえない唯一無二の体験です。POV(主観視点)映画や、じっくりと恐怖を味わいたいサイコホラーが好きな方には、ぜひ挑戦してみてほしい一作です。同じくじわじわとくる心理的な恐怖を描いた作品としては、『Evilenko』もおすすめです。

ウルグアイ発の低予算映画ながら、その斬新なアイデアで世界を驚かせ、後にハリウッドでリメイクもされた本作。夏の夜、部屋を暗くして、ヘッドホンで鑑賞してみてはいかがでしょうか。きっと、家の些細な物音にビクッとしてしまうはずです。

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