こんにちは、映画を観るのが何よりの癒やしな「私」です。今回ご紹介するのは、2005年に公開されたドイツ映画『Blackout』。タイトルから想像すると、最近ニュースで話題になっているキューバやイラクでの大規模停電(参考:ロイター通信)のようなパニック映画を思い浮かべるかもしれませんが、本作はそれとは対照的な、一人の男の孤独と断絶を静かに描いたヒューマンドラマです。
1. 基本情報
- 公開年:2005年
- ジャンル:ドラマ
- 評価:0.0(知る人ぞ知るインディペンデント作品です)
- 監督:Maximilian Erlenwein
2. あらすじ
数ヶ月間、消息を絶っていたギタリストのトム・シュルツ。彼がある日突然、ベルリンの街に舞い戻ってくるところから物語は始まります。しかし、かつての居場所だった場所に、彼の席はもう残されていませんでした。
地元のパブに顔を出せば激しい拒絶に遭って殴られ、妊娠中の恋人のもとを訪ねるも、彼女は言葉を交わすことさえ拒み、目の前でドアを閉ざしてしまいます。彼が不在の間に何があったのか。なぜこれほどまでに彼は「拒絶」されるのか。ベルリンの冷たい空気感の中で、トムは自分の人生が完全に「ブラックアウト(遮断)」されてしまった現実を突きつけられます。

3. 映画レビュー
この映画を観終わった後、なんとも言えない「心の重み」が残りました。最近のエンタメ作品のような派手な演出やスカッとする展開は一切ありません。むしろ、過去に犯した過ちや、一度壊れてしまった人間関係を修復することの絶望的な難しさが、淡々と描かれています。
タイトルである『Blackout』は、物理的な停電ではなく、社会的な繋がりや信頼がプツンと切れてしまった状態を指しているのだと感じました。主人公のトムが、かつて愛した人たちの生活の中に「異物」としてしか存在できない姿は、観ていて本当に胸が締め付けられます。過去の自分を消し去りたい、あるいはやり直したいと願うテーマは、以前紹介した『Boy A』にも通じるものがありますね。あちらも過去から逃げられない苦しみを描いていましたが、本作の方がより「日常の冷たさ」が際立っています。
また、ベルリンの街並みがどこか無機質で、トムの孤独を強調しているのも印象的でした。街の喧騒の中にいるのに、誰にも認識されない、あるいは拒絶されるという恐怖。それは『La Haine』のようなヒリヒリした都会の緊張感とも少し似ています。
ただ、救いがないわけではありません。すべてを失い、誰からも拒絶されたトムが、その「真っ暗闇(ブラックアウト)」の中で初めて自分自身と向き合う瞬間。そこに、微かな再生の兆しが見えるような気がしました。繰り返される日常の虚無感を描いた『Routines』が好きな方なら、この静かな絶望と再生の物語もきっと深く刺さるはずです。
派手なアクションを求めているなら『Lockout』のような作品の方が楽しめるかもしれませんが、秋の夜長に、一人でじっくりと「人間の深淵」を覗いてみたい夜には、この『Blackout』が最高の相棒になってくれるでしょう。


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